PTFE(テフロン)の加工で寸法が安定しない理由|素手で測るだけで変わる?

PTFE(テフロン)の加工で寸法が安定しない理由|素手で測るだけで変わる?

PTFEの部品を受け入れ検査で測ったら、図面の寸法と違っていた

PTFE(テフロン)の切削加工では、こうしたご相談をいただくことがあります。

PTFEは温度や力の影響を受けやすく、加工時には公差内に収まっていても、測定する環境や方法によって数値が変わることがあります。

実際に当社でも、素手で部品を持って測定すると、手の温度によって寸法が変化していく様子を確認しています。

今回は、PTFEの寸法が安定しにくい理由と、加工・測定時の注意点、公差を指定する際の考え方を、樹脂切削加工の現場から解説します!

PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、フッ素樹脂の代表的な材料です。「テフロン®」の名称で広く知られ、ナフロン®やバルフロン®などの商品名でも流通しています。

耐薬品性、耐熱性、滑りやすさに優れ、半導体製造装置や理化学機器、シール部品などに使用されています。

項目PTFEの特徴
比重約2.2
連続使用温度の目安約260℃
耐薬品性非常に優れている
硬さ比較的柔らかい
寸法安定性温度や荷重の影響を受けやすい
主な用途シール、パッキン、理化学機器、半導体関連部品

PTFEは耐熱性や耐薬品性に優れる一方で、寸法精度を維持するという点では注意が必要な材料です!

温度による伸び縮みが大きい

PTFEは、一般的な樹脂と比較して熱膨張が大きい材料です。

さらに、室温付近には結晶構造が変化する温度域があり、温度による寸法変化が単純な熱膨張だけでは説明できない場合もあります。

そのため、加工した工場と受け入れ検査を行う場所で室温が違うと、測定値に差が生じることがあります。

特に注意したいのが、素手で部品を持って測定する場合です。

手の温度が材料に伝わることで寸法が変化し、測定値が徐々に変わることがあります。

柔らかく、つかむ力で変形する

PTFEは比較的柔らかく、外から加わる力によって変形しやすい材料です。

旋盤のチャックやバイスで強く固定すると、材料が変形した状態で加工され、固定を解除した際に寸法が変わることがあります。

測定時も同様です。ノギスやマイクロメータで強く挟むと、測定する力によって材料がわずかに変形し、実際より小さい数値が出る場合があります。

時間の経過によって変形する

PTFEには、一定の力が加わり続けると、時間の経過とともに変形が進む「クリープ」という性質があります。

例えば、パッキンやシールのように締め付けた状態で使用する部品では、長期間の使用によって厚みが変化することがあります。

そのため、加工時の寸法だけでなく、使用中に加わる荷重や温度も考慮する必要があります。

加工中の熱によって寸法が変わる

切削加工では、刃物と材料の摩擦によって熱が発生します。

PTFEは熱膨張が大きいため、加工中や加工直後の温度が高い状態で寸法を合わせると、冷えたあとに寸法が変わる場合があります。

特に厳しい公差が指定されている部品では、加工直後の測定値だけで判断しないことが重要です。

PTFEの切削加工では、加工機の精度だけでなく、材料の固定方法や測定するタイミングにも注意しています。

当社では、主に次の点を意識して加工・検査を行っています。

  • 固定時の変形を抑える: チャックやバイスの締め付けを調整し、材料に必要以上の力を加えないようにします。
  • 荒加工と仕上げ加工を分ける: 必要に応じて加工工程を分け、材料の変形や温度変化を考慮しながら仕上げます。
  • 加工後の温度を落ち着かせる: 切削熱の影響が残った状態での測定を避けます。
  • 測定条件をそろえる: 素手で長時間持たないようにし、測定時の力や位置にも注意します。
  • 検査結果を記録する: お客様の図面にチェックを入れ、公差が指定された箇所には実測値を記入します。

PTFEは、加工できた時点で終わりではありません。加工後にどのような状態で寸法を確認するかも、精度を確保するうえで重要!

PTFE製 丸棒加工品(白)

PTFE製 丸棒加工品(白)

理化学機器に使用するバイパスシールリングをPTFEで製作しました。

薬品に触れる部品では耐薬品性が重要になるため、PTFEが選ばれることがあります。

この製品では面粗さにも指定があり、森精機製の汎用旋盤を使用して、ご要望にできるだけ近づけるよう仕上げました。

PTFE製 治具部品(黒)

PTFE製 治具部品(黒)

薬品に触れる環境で使用する治具にも、耐薬品性に優れたPTFEが使われています。

当社では、PTFEの丸棒からNC旋盤を使用して治具部品を製作しています。

PTFEは固定時の力や加工熱によって寸法が変化しやすいため、材料の変形や寸法精度に注意しながら仕上げています。

薄いPTFEシートの打ち抜き加工

薄いPTFEシートを使用した量産部品では、トムソン型による打ち抜き加工にも対応しています。

初期の型代は必要ですが、数量によっては切削加工よりも1個あたりの費用や加工時間を抑えられます。

※トムソン型による加工は薄板が対象です。

PTFE部品の寸法が図面と合わない場合、すぐに加工不良と判断するのではなく、まず測定条件を確認することが大切です。

測定条件

  • 測定時の温度: 加工側と検査側で温度が違っていないか、部品が検査室の温度になじんでいるか
  • 部品の持ち方: 素手で長時間持っていないか
  • 測定する力: ノギスやマイクロメータで必要以上に強く挟んでいないか
  • 測定位置: 加工側と同じ位置・方向を測っているか
  • 加工側の検査記録: 出荷時の実測値とどの程度の差があるか

測定条件をそろえても公差から外れる場合は、加工方法や固定方法なども含めて原因を確認する必要があります。

当社では、公差が指定された箇所の実測値を図面に記録しているため、受け入れ検査時の数値と比較することも可能です!

PTFEの耐薬品性や滑りやすさは魅力ですが、寸法安定性を優先する場合には、別の材料が適していることもあります。

材料PTFEと比較した特徴注意点
ガラス繊維入りPTFE変形やクリープを抑えやすい材料の入手性や相手材への影響に注意
PCTFE硬く、寸法安定性に優れる高価で、PTFEより使用温度の範囲が狭い
PEEK強度・剛性が高く、寸法が安定しやすい材料費が高く、薬品との相性に注意
PVC(塩ビ)・PP比較的安価で耐薬品性にも優れる耐熱性や強度などの条件が異なる

ただし、材料を変更すると耐薬品性や摩擦特性、使用可能な温度なども変わります。

単純に寸法安定性だけで選ぶのではなく、使用環境に合った材料を選定することが重要!

PTFEの加工では、すべての寸法に厳しい公差を指定すると、加工や検査に時間がかかり、費用が高くなることがあります。

図面を作成する際は、次の点を意識すると加工側との認識を合わせやすくなります。

指定項目考え方
寸法公差はめあいやシール面など、機能に必要な箇所を優先する
測定温度必要に応じて20℃などの測定条件を指定する
面粗さシール面や摺動面など、必要な箇所に指定する
材料ナチュラル材か充填材入りか、メーカー指定の有無を明確にする
使用条件温度、薬品、締め付け荷重などを伝える

特に、PTFEに±0.01mmなどの厳しい公差を指定する場合は、加工できるかどうかだけでなく、測定条件や使用時の寸法変化まで確認することが重要です。

必要な精度と材料の特性を踏まえて公差を設定することで、過剰な加工費を抑えながら、用途に合った部品を製作しやすくなります。

PTFEでも±0.01mmの公差は出せますか?

形状や大きさ、測定条件によっては対応できる場合もありますが、温度や測定時の力によって寸法が変わりやすいため、すべての製品で保証できるわけではありません。厳しい公差が必要な場合は、事前にご相談ください。

受け入れ検査で寸法が違うのはなぜですか?

加工時と検査時の温度差や、部品の持ち方、測定器で挟む力などが影響している可能性があります。まずは測定条件をそろえ、加工側の検査記録と比較することをおすすめします。

PTFEの寸法を安定させるには、どの材料がよいですか?

ガラス繊維やカーボンを充填したPTFEは、ナチュラル材よりも変形やクリープを抑えやすい材料です。また、使用条件によってはPCTFEやPEEKへの変更も検討できます。

PTFEの加工費を抑える方法はありますか?

機能に必要な箇所だけに厳しい公差を指定することが、費用を抑える方法の一つです。また、薄いシート状の量産部品では、トムソン型による打ち抜き加工が適している場合もあります。

PTFEの丸棒や板材だけでも購入できますか?

はい。当社ではPTFEを含む樹脂材料の切断・販売にも対応しています。在庫状況や寸法によっては、必要なサイズへの切断や、6面フライス加工、旋盤による外径・全長の仕上げも可能です。

詳しくは樹脂材料の切断・カット販売をご覧ください。

PTFEは耐熱性や耐薬品性に優れた材料ですが、温度・力・時間の影響によって寸法が変化しやすいという特徴があります。

加工精度だけでなく、測定時の温度や固定方法、使用中の荷重まで考慮することが大切です。

滝本技研工業では、PTFEの材料特性を踏まえた切削加工に対応しています。

「厳しい公差が必要」「受け入れ検査で寸法が合わない」「材料を変更した方がよいか迷っている」といった場合も、図面や使用条件をもとにご相談いただけます。