MCナイロンとPOM(ジュラコン)の違いと選び方|吸水・寸法・強さ・コストを比較
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MCナイロンとPOM、図面の材質欄にどちらを書けばいいのか迷う…
MCナイロンとPOM(ジュラコン)は、どちらも機械部品や治具などによく使われる樹脂材料です。
見た目だけでは大きな違いがないように感じますが、実際に加工して使用すると、それぞれ向いている部品が違います…!
特に違いが出やすいのが、吸水による寸法変化と衝撃に対する強さです。
例えば、はめあいや寸法精度を重視する部品ではPOMを使用することが多く、ワークが繰り返し当たるガイドや大きな部品ではMCナイロンを使用することがあります。
滝本技研工業でも、MCナイロンとPOMはどちらもよく加工する材料です。
今回は、それぞれの違いと、実際に部品を製作するときの材料の選び方について紹介します!
MCナイロンとPOMの大きな違いは「吸水」
MCナイロンとPOMの一番大きな違いは吸水による寸法変化です。
MCナイロンは空気中の湿気でも少しずつ水分を吸収し、わずかに膨らみます。一方、POMはMCナイロンと比べて吸水が少なく、寸法が安定しやすい材料です。
そのため…
- はめあいのある部品や公差の厳しい部品、水や切削液がかかる場所で使用する部品ではPOMを選ぶことがあります。
- ワークが繰り返し当たる部品や衝撃がかかる部品、厚みや直径のある大きな部品ではMCナイロンが向いている場合があります。
どちらも切削加工でよく使用する材料ですが、それゆえ「なんとなく」で選ばれやすく、あとから寸法トラブルや割れにつながることも…
MCナイロンとPOMの基礎知識
MCナイロン(モノマーキャストナイロン)とは、ナイロン6の原料を型に流し込んで重合させた樹脂です。粘りがあり、衝撃に強く、大きな板や太い丸棒を作りやすいのが特長です。
POM(ポリアセタール)とは、硬さ・強さ・滑りやすさのバランスが良いエンジニアリングプラスチックです。ジュラコン®(ポリプラスチックス社)やデルリン®(デュポン社)という商品名でも知られています。

MCナイロンとPOMの比較表
数値は当社の「取扱素材一覧」の値です。グレードによって変わるため、詳しくは材料メーカーのカタログで確認してください。
| 項目 | MCナイロン | POM(ジュラコン®) |
|---|---|---|
| 比重 | 1.16 | 1.41 |
| 耐熱温度(連続使用) | 120℃ | 100℃ |
| 吸水 | 多い | 少ない |
| 衝撃への強さ | 強い(割れにくい) | 普通(硬く、粘りは少なめ) |
| 燃えやすさ | 自己消火性 | 燃えやすい |
| 接着 | できない | できない |
| 屋外での使用 | おすすめしない | おすすめしない |
| 材料のサイズ | 厚い板・太い丸棒がある | MCナイロンより大きいサイズは少ない |
| 色 | 青・アイボリー・黒など | 白・黒のほか、赤・黄・青・緑・灰などのカラー品 |
| 特殊グレード | 耐熱(MC602ST)、摺動(MC703HL)、帯電防止(MC501CDR6)など | 導電・摺動グレードなど |
MCナイロンとPOMはどう使い分ける?
吸水や寸法変化が気になる場合
MCナイロンを使用するときに注意したいのが、吸水による寸法変化です。
例えば、冬に加工してぴったりだったピンが、梅雨や夏になると穴に入りにくくなることがあります。
また、長く保管していた材料と新しく入った材料で加工後の寸法に違いが出たり、切削液や水がかかる場所で使用することで、はめあいがきつくなったりすることもあります。
POMは吸水が少ないため、こうした変化はほとんどありません!
はめあいや公差が厳しい部品にPOMが選ばれやすいのはこのためです。
関連動画
【吸水と寸法変化】樹脂は水を吸います。だから寸法が動くんです!
樹脂は吸水だけでなく、温度によっても寸法が変わります。
寸法の変わりやすさを材料ごとに比べたい方は、関連記事「寸法が出ない原因は材料かも?樹脂材料別・公差設計の考え方」もご覧ください!
関連記事
寸法が出ない原因は材料かも?樹脂材料別・公差設計の考え方
ワークが繰り返し当たる部品
MCナイロンは粘りのある材料で、ぶつけても割れにくいのが特長です。
ワークが当たるガイドや、搬送ラインのローラーのように繰り返し衝撃がかかる部品に向いています。
POMも十分な強さがありますが、MCナイロンより硬く、粘りは少なめ。
ただし、細い部分や薄い部分に強い力が集中する形状の場合は、材料を変えるだけでは解決できないこともあり、その場合は形状の見直しも必要になります。

熱がかかる場所で使用する場合
連続して使える温度の目安は、MCナイロンが120℃、POMが100℃です。
POMは燃えやすい性質があるため、火気の近くで使用する場合は注意が必要!
100℃を超えるような場所では、MCナイロンの耐熱グレードや、PEEKなどのスーパーエンプラを検討します。
大きな部品や色分けしたい部品
MCナイロンは型に流し込んで作る材料なので、厚い板や太い丸棒が手に入りやすいという特長があります。
そのため、大きなベース板や太いローラーなどを1つの材料から削り出したい場合にも使われています。
一方、POMはカラー品が多く、色によって部品の種類や向きを見分けることができます。
組立ミスを防ぐ「ポカヨケ」の部品などでは、こうしたカラーPOMを使用することがあります。
切削加工するときにも違いがあります
MCナイロンとPOMは、どちらもマシニング加工や旋盤加工でよく削る材料です。
ただし、実際に加工してみると同じようには削れません。
MCナイロンは粘りがあるぶん、バリが出やすい傾向があります。
特に細いネジ穴や小さな穴が多い部品では、加工方法まで考える必要があります。
POMは比較的切削加工しやすい材料ですが、薄い形状や削り量が多い形状では反りが発生することも…
材料の種類だけでなく、形状や公差、加工方法まで含めて考えることが大切です!
滝本技研工業の製作事例
パレット治具|MCナイロンとPOMを組み合わせて製作

MCナイロンとPOMを組み合わせて、パレット治具を製作しました。
ワークが当たる部分には衝撃に強いMCナイロンを使用し、ベース部分はほかの部品と色で見分けるためPOMで製作しています。
現物を測ってパレットとワークの大きさを確認し、部品どうしが当たらないか、精度が出ているかを確かめてから組み立てました。
旋盤加工、マシニング加工、組立まで当社でまとめて対応しています。
1つの治具でも、場所ごとに材料を変えることで、それぞれの材料の特長を活かすことができます。
マニホールド|MCナイロン

MCナイロンでマニホールドを製作しました。
MCナイロンはタップでネジを切るとバリが出やすいため、RC(PT)ネジ部をヘリカル加工で仕上げ、バリを抑えています。
プログラムはCAD/CAMで作成しているため、短い納期にも対応できます。
ポカヨケリング|POMのカラー品

POMのカラー品で、ポカヨケリングを製作しています。
色は赤・黄・青・緑・灰・黒・白から選べるため、部品を見た目で判別できます。
量産では、オークマ製のNC旋盤複合加工機を使い、丸棒から取れる個数を計算して加工時間を短くしています。
検査用チェックピンとワークガイド

同じ自動車関連の設備でも、部品の役割によって材料が変わります。
検査用チェックピンは寸法が安定していることが大切なため、POMで製作しました。
オークマ製NC旋盤複合加工機(4軸)で割り出し加工まで1回の取り付けで仕上げ、位置決め治具を作らずにコストを抑えています。
一方、位置決め用のワークガイドは、ワークが繰り返し当たるためMCナイロンで製作しています。
形が比較的シンプルなので、短い納期と低めの価格で対応しています。
同じ設備に使用する部品でも、寸法の安定性が必要なのか、繰り返し衝撃を受けるのかによって材料を使い分けています。
MCナイロン・POMの寸法精度について
樹脂は金属より寸法が変わりやすい材料です。
当社では、MCナイロンやジュラコンの薄いプレートで、長さ50mmにつき反りを含めて0.05mm程度を目安としてお伝えしています。
これより厳しい精度が必要な場合は、形状や材料の変更も含めてご相談ください!
材料選びで起こりやすいトラブル
MCナイロンとPOMはどちらも機械部品や治具によく使われますが、使う環境や用途に合っていない材料を選ぶと、加工時には問題がなくても、使用を始めてからトラブルが出ることがあります。
MCナイロンが水分を吸って、部品が入らなくなった
MCナイロンは吸水する性質があるため、湿度の高い場所や水・切削油がかかる環境では寸法が変化することがあります。
たとえば、製作直後は問題なく入っていたピンや治具でも、使用環境によっては少し膨らみ、「きつくなった」「入らなくなった」ということがあります。
はめ合いや寸法精度を重視する部品では、使用環境まで考えて材料を選ぶことが大切です。
POMを衝撃がかかる場所に使って、欠けや割れが発生した
POMは寸法安定性に優れていますが、繰り返し強い衝撃が加わる部品では、用途によって欠けや割れが発生することがあります。
ワークが何度も当たるガイドやストッパーなどでは、寸法精度だけでなく「どのくらい衝撃がかかるのか」も材料選びのポイントになります。
このような用途では、MCナイロンが適している場合もあります。
寸法だけで材料を決めたら、実際の使用環境に合わなかった
図面上の寸法や公差だけを見て材料を決めると、実際に使い始めてから問題が出ることがあります。
水や湿気があるのか、ワークが繰り返し当たるのか、熱がかかるのか。
「どんな形を作るか」だけでなく、「どんな場所で、どう使うか」まで考えることが樹脂材料選びでは重要!
滝本技研工業では、図面だけでは判断しにくい場合も、用途や使用環境を確認しながら材料選定をご提案しています。
MCナイロンとPOMの選び方
材料選定の目安をまとめると、次のようになります。
| 確認すること | おすすめ |
|---|---|
| はめあいがある、または公差が±0.05mmより厳しい | POM |
| 水・湿気・切削液がかかる | POM |
| ワークや部品が繰り返しぶつかる | MCナイロン |
| 厚さや直径が大きい | MCナイロン |
| 100℃前後の熱がかかる | MCナイロン(耐熱グレード)またはPEEKを検討 |
| 火気の近くで使う | POMは避ける |
| 色で部品を見分けたい | POM(カラー品) |
| 静電気を防ぎたい | 帯電防止・導電グレードを相談 |
発注するときは、使う場所(温度・水・油)、部品の役割、いちばん大事な寸法、数量と納期を伝えていただくと、適した材料をご提案しやすくなります!
よくある質問
MCナイロンとPOM、価格はどちらが安いですか?
材料の価格は近く、サイズやグレードによって逆転することもあります。
部品の価格は材料費より加工時間の影響が大きいため、形状と数量をお知らせいただければ、両方の材料でお見積もりします。
MCナイロンの吸水による寸法変化は防げますか?
完全に防ぐことはできません。
公差が厳しい部分だけPOMにする、はめあいに余裕を持たせるといった方法があります。
ジュラコンとPOMは同じ材料ですか?
ジュラコン®はポリプラスチックス社のPOM(ポリアセタール)の商品名です。材料の種類としては同じです。
材料だけ買うこともできますか?
できます!
必要な大きさに切って販売するカット販売のほか、6面フライス(6F)仕上げにも対応しています。
今MCナイロンで使っている部品をPOMに変えても大丈夫ですか?
寸法の安定が目的であれば、POMへの変更を検討できます。
ただし、衝撃がかかる部品や熱がかかる部品では、欠けや変形が出ることがあります。
使用している場所や現在困っていることが分かれば、材料変更も含めて確認できます。
1個だけの試作でも頼めますか?
はい。1個から製作します。
同じ部品のリピートも1個から対応しています。
まとめ
MCナイロンとPOMの大きな違いのひとつが吸水による寸法変化です。
寸法を安定させたい部品ではPOM、繰り返し衝撃がかかる部品や大きな部品ではMCナイロンが使われることが多くあります。
ただし、実際には寸法だけでなく、使用温度や水・油の有無、部品の形状なども確認して材料を選ぶ必要があります。
1つの治具の中でも、ワークが当たる部分はMCナイロン、寸法の安定性が必要な部分はPOMというように、場所によって材料を使い分けることもできます。
「この部品にはどちらが合うか」という段階からご相談いただけます。
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