生分解性プラスチックとは?種類・特徴・用途をわかりやすく解説!

生分解性プラスチックとは?

生分解性プラスチックとは、自然界に存在する微生物などによって、最終的に水と二酸化炭素(またはメタン)にまで分解されるプラスチックのこと

自然環境中で分解されるため、海洋汚染やマイクロプラスチック問題の解決手段としても注目されています!

バイオマスプラスチックとの違い

生分解性プラスチックと混同されやすいのが「バイオマスプラスチック」です。両者の主な違いは下記の通り!「バイオ由来=生分解性」ではないので注意!

項目生分解性プラスチックバイオマスプラスチック
定義微生物などにより最終的に水と二酸化炭素に分解されるプラスチック植物などの再生可能資源から作られたプラスチック
原料植物由来 or 石油由来どちらもあり主に植物由来(トウモロコシ・サトウキビなど)
分解性条件により自然界または工業的に分解可能基本的に分解されないものが多い(PE・PETなど)
環境貢献の仕方廃棄後に分解することでごみ削減に繋がる!原料が再生可能資源なのでカーボンニュートラルに貢献!
主な代表例PLA、PBS、PHA、PBAT などバイオPE、バイオPET、バイオPA など
誤解されがちな点「すべて植物由来」と思われがち「すぐに分解する」と誤解されがち
組み合わせ生分解性かつバイオ由来(例:PLA)も存在生分解性を持たないものが多い(例:バイオPET)
廃棄時の注意点焼却・堆肥化・分解処理が前提通常のプラスチックと同様の処理が必要

必ずしも「植物由来=分解される」とはならないため、処理方法には注意が必要!

分解メカニズムと分解環境

分解は自然界の微生物による酵素反応で進行します!分解するスピードや完了するまでには、環境条件が大きく影響します。

  • 温度:多くの素材は高温(50℃以上)で分解が進みやすい!
  • 湿度・酸素供給:適切な水分・空気が必要!
  • 微生物の種類と密度:土壌やコンポストなどの有機物環境で活性化!

家庭のごみ箱に捨てたからといって、自然に分解されるわけではありません…!

現在広く利用されている、あるいは注目されている生分解性プラスチックを4種類を比較しました!

PLA(ポリ乳酸)PHA(ポリヒドロキシアルカン酸)PBS(ポリブチレンサクシネート)PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)
生分解性◎(条件付き)◎(自然環境でも可)◎(産業コンポスト可)◎(土壌・堆肥中で分解)
機械的強度○(やや硬質)○(やや脆い)○(バランス型)△(柔軟性重視、強度やや低)
柔軟性△(硬い)△(脆い)○(程よい)◎(非常に柔軟)
耐熱性△(60℃程度)○(素材により差)○(90℃前後)△(60℃前後)
透明性○(半透明)
コスト△(やや高め)✕(非常に高い)○(中程度)○(比較的安価)
使用例食品容器、カップ、フィルム医療分野、農業用シートなど包装材、マルチフィルムゴミ袋、ストレッチフィルム、レジ袋
特徴・備考工業コンポストでのみ分解可微生物産生由来、自然分解性◎石油由来だが生分解性あり石油由来、柔軟性と分解性の両立

生分解性プラスチック4種類の詳細は下記の通り!

PLA(ポリ乳酸)

環境配慮型樹脂の代表格!耐熱性や柔軟性には課題がありますが、コスト・流通・加工性に優れている!

項目内容
原料トウモロコシやサトウキビなどの植物由来デンプン
生分解性工業コンポスト条件下で分解可(高温高湿環境)
機械的特性剛性が高く、透明性あり。やや脆く、柔軟性や衝撃強度には乏しい
耐熱性約60℃まで(改質で耐熱向上可能)
コスト中程度〜やや高め
主な用途食品容器、透明カップ、フィルム、3Dプリンタ樹脂など
備考リサイクル性も高いが、自然分解は困難…(家庭用コンポストでは不可)

PHA(ポリヒドロキシアルカノエート)

量産・価格面がネックですが、最も自然環境に優しい!

項目内容
原料微生物が糖や油脂を栄養源にして生産する天然ポリエステル
生分解性自然界(海水・土壌)でも分解可能
機械的特性脆くて割れやすい傾向。柔軟性や強度はグレードによる
耐熱性PLAより高い(70〜100℃程度)
コスト非常に高価(量産技術が未熟)
主な用途医療材料、農業用マルチフィルム、包装材など
備考本格普及にはコスト削減が鍵

コストの高さが課題ですが、海洋分解性のある素材として注目されています。

PBS(ポリブチレンサクシネート)

バランス型!成形性がよく、フィルム・容器の中間的存在!包装・農業資材での活用が多い!

項目内容
原料コハク酸(植物由来または石油由来)とブタンジオール
生分解性土壌・コンポストで分解可能(特に産業コンポストで分解速度高)
機械的特性柔軟性と強度のバランス良好。成形加工性にも優れる
耐熱性約90℃まで(PLAより高い)
コスト中程度
主な用途包装フィルム、ゴミ袋、農業用シート、容器類
備考他素材とのブレンド用途も多い

PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)

柔軟性・耐衝撃性があり、袋・フィルム系に強い!

項目内容
原料石油由来のテレフタル酸、アジピン酸、ブタンジオール
生分解性堆肥条件や土壌中で分解可能
機械的特性柔軟性・耐衝撃性に優れ、フィルム性が良好
耐熱性約60℃程度
コストPLAやPBSより安価(ただし石油由来)
主な用途レジ袋、ゴミ袋、農業用シート、ストレッチフィルム
備考他の生分解性樹脂とのブレンドが多い
用途PLAPHAPBSPBAT
食品包装・容器類
レジ袋・ごみ袋・フィルム
農業用マルチフィルム
医療・生体適合材料×
繊維・不織布
発泡トレー・緩衝材
工業部品・3Dプリンタ用途×

PLA:加工性・透明性に優れ、食品容器、透明カップ、フィルム、3Dプリンタ樹脂などに多用!

PHA:医療用や生体分解用途で注目されるがコストが高い…

PBS:バランス型、容器やフィルム、農業資材に適性あり!

PBAT:柔軟性があり、袋・フィルム系で実績が多い!

分解には特定環境が必要

「生分解性」とはいえ、自然界ですぐに分解されるわけではなく、実際には工業的なコンポスト環境(高温・高湿・適切な微生物環境)が必要なものも多く存在します!例えば、PLA(ポリ乳酸)は自然環境ではほとんど分解が進まないことも…

今後の展望

常温常湿でも分解が進む新素材の開発が進んでおり、実用化が期待されています!また、自治体レベルで産業用コンポストや家庭用生ごみ処理機との連携が進めば、処理インフラとしての整備も同時に進展していくかも!?

さらにパッケージに「○○℃以上で分解します」などの条件を明記したり、お店や学校などで「正しい捨て方」の啓発活動を行うことで、「環境に良いと思っていたのに実は…」という誤解が減り、正しく使える人が増えると考えられます!

性能面での限界

衝撃に弱い、熱に耐えられない、水に弱いなど、石油系プラスチックに比べると機能面で物足りないとされることが多いのが実情…

今後の展望

現在の生分解性プラは、強度や耐熱性、透明度などが一般的なプラスチックに劣る場合がありますが、今後は…添加剤や新素材の開発で、もっと丈夫で使いやすい製品が登場したり、食品包装やレジ袋だけでなく、家電や部品など幅広い分野で使える可能性も!?

つまり、「使いにくい」から「これで十分」になる未来が近づいています!

コストの高さ

製造コストが高く、価格競争が求められる分野では導入ハードルが高い

今後の展望

今は生分解性プラは「高い」と言われがち…でも、それはまだ量産体制や製造技術が十分に発展していないから!これからは…

  • 工場の増加・大量生産によって製造コストが低下
  • 原料にトウモロコシの廃棄物など安価なバイオ資源を使う工夫!
  • 政府の補助や支援策で導入しやすくなる企業も増える!

価格のハードルが下がれば、一般消費者にも自然に広がっていくはず!

分別・リサイクルの未整備

多くの自治体では、まだ生分解性プラスチックの明確な分別基準や回収体制が整っていません。そのため、可燃ごみに混ざって焼却されてしまうことも少なくない…

今後の展望

今後は「分解可能な認証マーク」などの導入、それに対応した回収ボックスやごみ処理ルールの導入、コンプト施設(生ごみと一緒に処理できる施設)の拡大など、こうした整備が進めば、適切なリサイクルやコンポスト処理がしやすくなり、環境への効果も最大化される!

誤解や過信による逆効果

「生分解性=自然に消えるから大丈夫」という誤解が広がることで、ポイ捨てや不適切な使用が増える懸念もあります。結果的に、環境への負荷がかえって大きくなる可能性あり…!

今後の展望

商品パッケージやポスター、WEBサイトなどで、「この素材は〇〇℃以上で分解が始まります」「家庭のゴミではなく、コンポストに入れてください」といった正しい使い方・捨て方を伝える仕組みが必要!

また、最近は製品の「原料調達 → 製造 → 使用 → 廃棄」まで、すべての段階でどれくらい環境に優しいかを比べる考え方(LCA:ライフサイクルアセスメント)が重要視されています。これにより、「本当に環境に良いのか?」を数値やデータで説明できるようになり、より信頼できる製品選びと処理方法の普及が進んでいくと考えられます!

生分解性プラスチックは自然界ですぐに分解されますか?

必ずしもすぐには分解されません!

生分解性プラスチックは、特定の温度・湿度・微生物が揃った環境(例:産業用コンポスト施設)でないと分解が進まないことが多く、海や公園などではほとんど分解しない場合もあり!

「分解される条件」を知って、正しく処理することが大切です!

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックはどう違うのですか?

「分解するかどうか」と「原料の由来」が違う!

生分解性プラスチック:特定の条件下で分解されるプラスチック

バイオマスプラスチック:植物などの再生可能資源を原料にしたプラスチック(分解されるとは限らない)

ただし、バイオマスでも「燃え残る・残留する」素材もあるので注意が必要!

生分解性プラスチックは普通のごみとして捨てて大丈夫ですか?

地域のごみ分別ルールに従う必要があります!多くの地域では、生分解性プラスチックも「プラスチックごみ」や「可燃ごみ」として処理されます。リサイクルルートに混ざると問題になることもあるため、 「生分解だから自然に還る」と思わず、自治体のルールに沿った処分が重要です!

生分解性プラスチックは、環境にやさしいとされる一方で、「自然に放っておけば分解する」わけではありません!

多くの素材は高温・高湿・微生物がそろった特定の環境(例:産業用コンポスト)でないと分解が進まず、海や土の中ではほとんど変化しない場合もあります。

また、「植物由来=生分解する」というのも誤解であり、バイオマスプラスチックの中には分解しないものも多数あります!

現在の生分解性プラスチックには…

  • 強度・耐熱性などの性能面の課題
  • 高コストでの導入ハードル
  • リサイクルや分別体制の未整備

といった問題が残されています。しかし、今後は以下のような展望が期待されます!

  • 常温・自然環境でも分解可能な新素材の登場!
  • 成形性や耐久性を改善した製品の開発!
  • 回収・処理インフラの整備!
  • LCAなどを用いた「本当に環境に良い選択」の可視化!

大切なのは、誤解に基づく「使い捨て」ではなく、特性を理解したうえでの「正しい利用と処分」です!製品や素材に合わせて「どう使うべきか」「どこで処分すべきか」を学び、地球にやさしい選択を広げていきましょう!