寸法が出ない原因は材料かも?樹脂材料別・公差設計の考え方

寸法トラブルの多くは「加工精度」では説明がつかない!
樹脂部品で寸法が合わない、組付けられないといったトラブルが起きたとき、まず疑われるのは加工精度です。
しかし実務では、加工自体は図面通りでも、材料特性が原因で結果的に寸法が成立しないケースが少なくありません…!
樹脂は金属と違い、環境や時間の影響を受けやすい材料です。とくに設計段階で見落とされがちなのが、次のような要因です。
見落とされがちな要因
- 吸水による膨張・収縮
- 温度変化による寸法変動
- 切削後の内部応力解放
- 経時変化による反りや歪み
これらは単体では小さな変化でも、公差が厳しい設計ほど無視できない影響になります!
「吸水・温度・時間」が寸法にどう影響するか
吸水性のある樹脂では、使用環境の湿度によって材料が水分を含み、外形が膨らんだり穴径が縮んだりします。
加工直後は寸法が合っていても、使用開始後にズレが生じるのはこのため!
また、樹脂は線膨張係数が大きく、温度変化の影響を強く受けます。
常温基準で設計した場合でも、実際の使用温度が高い・低い環境では、想定以上の寸法変化が起こることもあり!
さらに、切削加工によって材料内部に残った応力が時間とともに解放され、数日後に反りや歪みとして現れることもあります。
「加工直後は問題ないのに、後工程で合わない」という相談は、この影響が原因であることが多いです…!
MCナイロン|動く前提で考える寸法設計
MCナイロンは強度や耐摩耗性に優れ、機械部品で多用される材料ですが、吸水による寸法変化が比較的大きいという特性を持っています。
そのため、公差設計では特に注意が必要です!
設計時の重要ポイント
- 加工直後の寸法=最終寸法ではない
- 使用環境(湿度・温度)で寸法が変わる
- 嵌合部や軸穴は余裕を持たせる設計が必要
MCナイロンは「寸法を固定する材料」ではなく、変化することを織り込んで使う材料と考えるのが現実的!
POM(ポリアセタール)|精度が必要な場合の現実解
POMは吸水が少なく、樹脂材料の中では寸法安定性が高い部類に入ります。
切削加工性も良好なため、比較的タイトな公差設計が求められる部品にも使いやすい材料です!
その一方で、形状によっては応力や反りが出ることもあるため、万能ではない…!特に薄肉形状や長尺形状では、以下の点を意識する必要があります。
設計時の重要ポイント
- 機能寸法と非機能寸法を分けて考える
- 不要な箇所まで厳しい公差をかけない
- 加工工程を想定した形状にする
「樹脂で寸法精度が必要」という条件がある場合、POMは現実的な選択肢になりやすい材料です!
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PE・PEEK|「寸法より何を優先するか」
PE(ポリエチレン)は柔らかく、耐薬品性や軽量性に優れる材料ですが、寸法安定性という点では注意が必要!温度変化や荷重による変形が起きやすく、寸法精度を重視する用途には向いていません…
一方、PEEKは高機能樹脂として耐熱性・耐薬品性に優れ、寸法安定性も比較的高い材料です!ただし、材料費が高いため、再加工や設計ミスのリスクは極力避ける必要あり…!
PE・PEEK
- PE:寸法より機能・特性を優先する材料
- PEEK:精度と性能を両立させたい場面の材料
この2つの材料は対照的で、上記のように整理すると、設計判断がしやすくなります!
材料特性を無視した公差指定が生む問題
材料特性を考慮せず、すべての寸法に同じレベルの公差を指定すると、加工コストが上がるだけでなく、現場での微調整や再加工が発生しやすくなります。
その結果として起こりやすいのが…
- 加工は合っているのに組めない
- 図面通りだが現場で削り直し
- 納期遅延やコスト増加
といった、本来避けられたはずのトラブルです…!
公差を決める前に考えるべき設計視点
公差設計では、数値を決める前に考えるべきことは以下の通り!
- 使用環境(温度・湿度)
- 相手部品との関係
- 管理すべき本当の機能寸法
- 材料変更の可能性
これらを整理したうえで材料特性と照らし合わせることで、現実的でトラブルの少ない公差設計が可能になります!
材料別|寸法安定性・公差設計の比較表
樹脂材料ごとに寸法安定性や公差設計の考え方は大きく異なります。代表的な材料について、実務での判断基準を比較表にまとめました!
| 材料名 | 寸法安定性 | 吸水の影響 | 公差設計の考え方 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| MCナイロン | 低〜中 | 大きい | 厳しい公差は避け、使用環境を前提に設計する | 耐摩耗部品、摺動部、強度重視部品 |
| POM(ポリアセタール) | 高 | 小さい | 樹脂の中では比較的タイトな公差が可能 | 嵌合部、摺動部、精度が必要な部品 |
| PE(ポリエチレン) | 低 | ほぼなし | 寸法管理は最小限、外形公差は緩めが前提 | 耐薬品用途、軽量部品 |
| PEEK | 高 | 非常に小さい | 厳しめの公差設計が可能だが再加工リスクに注意 | 高温環境、精密・高機能部品 |
まとめ|材料特性を踏まえた公差設計がトラブルを防ぐ
樹脂加工における寸法トラブルの多くは、加工精度そのものではなく、材料特性を十分に考慮しないまま公差を設定していることが原因になっています。
樹脂は吸水や温度変化、時間経過の影響を受けやすく、金属部品と同じ感覚で寸法設計を行うと、加工後や使用段階で寸法ズレが発生しやすくなります…
特にMCナイロンのように吸水の影響を受けやすい材料と、POMやPEEKのように比較的寸法安定性の高い材料とでは、公差設計の考え方を明確に変える必要があります!
すべての寸法を同じレベルで管理するのではなく、「どの寸法が機能に直結しているのか」を見極め、材料特性に合わせて優先順位をつけることが重要!
設計段階で材料特性を理解し、使用環境や組付け条件を踏まえた判断を行うことで、不要なコストや再加工、納期遅延といったトラブルを未然に防ぐことができます!
お問い合わせ・ご相談の流れ
滝本技研工業では、樹脂加工のプロとして、単に加工するだけでなく「製品が実際に使われる現場」を想定して、最適な補強方法をご提案しています。
トラブルを防ぐために、図面提出時(温度・湿度などの使用環境、組付け条件、本当に重要な寸法など)のご協力をよろしくお願いいたします。
また、寸法や公差設定で迷った場合や、過剰な公差指定や不要なコスト、後戻り設計を防ぐためにも設計段階での事前相談が最も効果的です!
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