樹脂部品のねじ規格と補強対策|滝本技研工業による実践ガイド

樹脂部品のねじ規格と補強対策

「同じサイズだと思っていたのに入らない…」
「試作はうまくいったのに量産で締結不良が…」

こうしたトラブル、実は「ネジ規格の認識のずれ」が原因なことが少なくありません。

この記事では、設計・調達・組立など各工程で注意すべきネジ規格のポイントを、現場目線でわかりやすく解説します!

基本を押さえてトラブル減少!

ネジ規格とは、ネジの形状や寸法、ピッチ、角度、強度などを国際的に定めたルールのこと!規格が異なれば、同じ「6mm」に見えても締結できなかったり、強度が足りなかったりします。

代表的なネジ規格

  • メートルねじ(Mねじ):日本で最も一般的(JIS/ISO)
  • ユニファイねじ(UNC/UNF):インチ表記、米国製品で多い
  • 管用ねじ(PT/Rc/G):配管で使用、密封性を持つものがある
項目メートルねじ(Mねじ)ユニファイねじ(UNC/UNF)ウィットねじ(Wねじ)
呼び径の単位ミリ(mm)インチ(inch)インチ(inch)
角度60°60°55°
規格名JIS B0205 / ISO 261ANSI B1.1BSW(英国規格)
使用地域日本・ヨーロッパアメリカ・カナダイギリス
代表的な表記例M6×1.01/4-20UNC1/4W

このように、見た目が似ていても中身が違うネジは数多く存在します!「図面上の指定」と「実際に使われた部品」が合っていないことで思わぬ不具合が起こることも多い…!

メートルねじとは?

メートルねじ(ミリねじ)は、呼び径やピッチをミリメートル単位で規定するねじの規格で、日本をはじめ、ヨーロッパやアジア圏など世界的にも広く使用されています!

JIS(日本工業規格)では「JIS B0205」、国際的には「ISO 261」によって管理されており、ねじ山の角度は60度です。

よく見られる表記の例としては「M6×1.0」があります。これは、呼び径6mm、ピッチ1.0mmの並目ねじを意味します。

メートルねじ(ミリねじ)のメリット

  • 単位系がSI(国際単位系)で統一されているため、世界中で互換性が高い
  • 加工性や精度管理に優れており、機械加工との相性が良い
  • 設計図や部品表での表記が簡潔かつ視認性が高い

ユニファイねじとは?

ユニファイねじは、主にアメリカ・カナダなど北米地域で採用されているインチベースのねじ規格で、UNC(ユニファイ並目)やUNF(ユニファイ細目)などに分類されます!

規格は「ANSI B1.1」に基づいており、ねじ山角度はメートルねじと同じく60度です。

表記例としては「1/4-20UNC」があり、これは直径1/4インチ、1インチあたり20山の並目ねじを表します。

日本国内では、海外機器の修理・交換部品や輸入機械の設置の際に用いられるケースが多く、「ミリねじとそっくりなのに合わない」というトラブルの原因になることもあり…!

ウィットねじとは?

ウィットねじは、イギリス発祥のインチねじ規格で、ねじ山角度が55度という点が最大の特徴です。正式には「BSW(British Standard Whitworth)」と呼ばれ、19世紀から使用されてきた歴史のある規格です。

近年では使用機会が減ってきていますが、古い機械・船舶・鉄道・輸入品の補修など、特定の分野では今でも現役!

ただし、ウィットねじは、現在主流のユニファイねじやメートルねじとは互換性がありません…同じ径・同じピッチでも、ねじ山角度が異なるため、ネジがうまく噛み合わず破損の原因となります!

メートルねじ、ユニファイねじ、ウィットねじの違いと注意点

項目メートルねじ(Mねじ)ユニファイねじ(UNC/UNF)ウィットねじ(Wねじ)
呼び径の単位ミリ(mm)インチ(inch)インチ(inch)
角度60°60°55°
規格名JIS B0205 / ISO 261ANSI B1.1BSW(英国規格)
使用地域日本・ヨーロッパアメリカ・カナダ英国発祥、古い機械分野に残存
代表的な表記例M6×1.01/4-20UNC1/4W
主な用途汎用工業製品・機械輸入製品・航空・自動車等古機械・船舶・鉄道など
現在の主流度△(一部の補修向け)

ねじの角度・単位の違いが設計や補修の成否を左右する!

ウィットねじは一見古い規格ですが、現在でも補修や特殊用途で重要な役割を果たしている規格です。設計や調達時に「インチねじなら何でも使える」と誤解すると、致命的なミスや破損につながることがあります!

設計者やメンテナンス担当者は、ねじの単位・角度・ピッチなどの基本をしっかり理解し、目的に合ったねじを正確に使い分けることが必要不可欠!

メートルねじとユニファイねじ(インチねじ)の違い

一見よく似た外観でも、ピッチが異なるため互換性はありません!

種類単位主な使用地域
メートルねじ(M)mmM6×1.0日本・欧州・アジア
ユニファイねじ(UNC/UNF)inch1/4-20 UNCアメリカ・一部外資製品

部品メーカーによっては、同じような外径で規格が異なる製品を出していることもあり、図面確認が必須です!

管用ねじ(PT・Rc・G)の罠

流体配管まわりで登場する管用ねじは、同じR表記でも密封性能の有無が違います。

  • Rねじ(PT):テーパー状、密封性あり(オス側)
  • Gねじ:平行ねじ、Oリングやパッキンと併用する前提
  • Rcねじ:メスのテーパねじ

上記の組み合わせを誤ると漏れや締結不良の原因に…設計・購買・現場で呼び方だけで判断せず、図面寸法での確認が重要です!

設計段階での注意:略号や表記の使い分け

  • 「M6」「M6×1.0」「6-1」など、社内ルールとJIS表記が混在しやすい
  • 海外部品では「1/4-20 UNC」などインチ表記が紛れ込む可能性あり
解決策

調達時の注意:規格名だけでは判断しない

  • ネジはサイズよりも規格名+ピッチのセットで判断!
  • 特に社外調達や海外製品の取扱い時は要注意!
解決策

組立現場の落とし穴:入りそうで入らないケース

  • メートルとユニファイ、無理にねじ込むとねじ山が破損…!
  • 管用ねじの「G」と「R」を誤って組んでオイル漏れ・気密不良
解決策

失敗例1:試作でOK、量産でNG

試作では入ったが量産でNG…

要因と対策

失敗例2:ねじの組み合わせで漏れ発生…

GねじにPTねじを組み合わせてしまった…

要因と対策

見た目が同じネジを使ったら、うまく締まらなかったのはなぜ?

見た目やサイズが似ていても、「ねじ山角度」「ピッチ」「単位系(ミリ or インチ)」が異なる規格の可能性があります。特にユニファイねじ(60度)とウィットねじ(55度)は非常に混同しやすい!

回避方法

  • 必ず図面や仕様書で使用規格を確認
  • 必要に応じてねじ山ゲージで角度やピッチをチェック
  • 部品や工具を「メートル系」「インチ系」で明確に区別・管理!

海外製品と国産部品が合わず困った!原因は?

海外製品(特にアメリカ製やイギリス製)は、ユニファイねじやウィットねじなどのインチ系規格を採用していることが多く、ミリねじ(メートルねじ)とは互換性がありません

回避方法

  • インポート製品にはインチねじが使われている可能性を前提にチェック
  • 修理・メンテ時には、オリジナル規格を正確に把握する
  • 必要に応じてインチ規格対応の工具や補修部品を用意

ネジ山が潰れてしまった…どう補修すればよい?

違う規格のねじを無理にねじ込んだり、過大なトルクで締めたことが原因の可能性があります。ネジ山が潰れた場合、タップでの再ねじ切りやヘリサート(ねじ山補修キット)による補修が一般的!

回避方法

  • 締結前に規格とピッチを必ず確認!
  • 不明なねじ穴にはテスト用のねじゲージを使って計測
  • 万一のトラブル時に備え、ヘリサートなどの補修手段を準備しておく!

樹脂部品にねじを使う場面では、以下のような構造的・材料的な課題がよく発生します。

  • 樹脂のねじ山がつぶれる/緩む
  • 繰り返し使用でねじが効かなくなる
  • 違う規格のねじを誤って使い破損

これらのトラブルは、設計段階でのねじ規格の明記や、補強・補修手段の選定によって防止可能

中でも、ヘリサートなどの金属インサートによる補強は、高い信頼性と汎用性を持ち、樹脂加工品のねじトラブル対策として広く活用されています!

滝本技研工業では、精密樹脂加工における「ネジ締結部トラブル」を数多く解決してきました!特に以下のような課題に対して、設計+加工の両面から改善提案を行っています!

トラブル内容原因滝本技研工業の対応例
ネジ締結時に透明樹脂が割れる応力集中、鋭角エッジ、力の逃げ道なし逃げR・テーパー加工、厚み調整の提案
ネジがすぐに空回りするバリ残り、逃げ底なし、浅い下穴深穴・逃げ底加工、繰返し締結対応設計
ネジを締めたら片側だけ浮くザグリ面の精度不足、傾斜平面度・同軸度確保+面粗度調整加工
メンテナンスごとにネジが緩むタップ寿命不足、ネジ山の摩耗金属インサートの挿入、補強構造設計
ネジが入りにくい・工具が入らない逃げ加工指示なし、手や工具のスペース不足締付スペースの確保設計、最小逃げ加工提案
そもそもタップの持ちが悪いバリ残り・深さ不足・タップ条件不適最適送り設定・テーパー逃げ・深穴設計

現場が抱える「気付きにくい」問題点

  • 図面上は問題なしでも、実際には破損や不具合が起きる
  • 使い切り前提の設計で、メンテナンス性が犠牲になっている
  • 「削るだけ」でなく、使う現場目線の配慮が足りていない
  • 「繰り返し使う」「再整備する」という運用視点が抜けている
  • 締結・脱着を繰り返すときに、徐々に不具合が顕在化する
  • 設計者だが「実装不良」でクレームが来ることがある…
  • 組立ラインで「毎回バリ取り」や「手直し作業」が発生している…
  • 今後「繰り返し使用」を前提とした設計変更を検討中…

お問い合わせ〜解決までのフロー

現状の「困りごと」「気になる不具合」を整理
📌 ネジ締め時に割れる or 緩む
📌 図面通り作っても実装で不具合
📌 繰り返し使うと精度が落ちる
📌 工具が入らない、座面が斜め
図面・使用状況・不具合内容を簡単に共有
📌 現物写真や図面があるとスムーズ!
📌 使用頻度・締結回数・再整備の有無も参考になります!
滝本技研工業が「設計+加工」の両面から改善提案
📌 逃げ加工、厚み補正、タップ深さ、工具スペースなど
📌 図面上だけでなく、現場の使いやすさも含めたをご提案!
試作 or 小ロットでの検証 → 本格採用へ!
📌 長期使用を見越した提案
📌 再締結性、耐久性、作業性などに配慮した構造で再発防止

お問い合わせはこちらから!

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